辞めるつもりで金曜日に仕事を全部片付けたのに…と悔しくなる。
退職願を受理すると言ったじゃない、と子供のように駄々を捏ねた。


「いいじゃねえか、延期するだけでどうせそのうち辞めさせるんだ。俺との結婚が確定したらな」


今回はその前準備だと言って笑い、「えええっ!?」と声を張り上げた。


「確定するまではこれまで通り幼馴染みだというのは話すなよ。その方が周りにも気を遣わせなくて済むから」


「ちょっと紫苑!」


「萌音も自分と同じ部署に社長の幼馴染みがいたら仕事しづらいだろ」


総務部の連中の気持ちを考えろと言われ、「そりゃ、そうだけど…」と答えるしかなくて。


だから私を解雇してくれればいいのに…と訴えても、紫苑は絶対に首を縦に振らない。

しかも、これからは毎日一緒に出勤すると言いだし、その為に一緒に住むことも決めたと話した。


「一緒に住んだら毎日萌音の作る料理が食えるから弁当作りもしなくていいし、俺としてはそれなりに満足だ」


「私よりも料理が目的なの!?」


「いや、萌音だけど」