「毎日じぃっと見られてたの」
萌音はそう言うとぎゅうっと力を込めてカップを握った。
俺はそんな萌音を確認して、え…と声を発した。
「ストーカーか?!」
(許せん!)と一瞬焦ったが。
「違うの。あの人はストーカーと言えるほど凶悪でもなくて、ただ毎日、銀行に来ては窓口に座る私と話がしたいだけみたいで。
でも、私は気持ちが悪くて。いつかあの人に何かをされるんじゃないかと怯えてばかりいたの。
だから、支店長にも相談をして、窓口業務を換えて欲しいと願ったのに、支店長は頭の固い人で、『新人なんだから我慢しなさい』と言うばかりで、なかなか換えて貰えなくて悩んでた。
それで、勤めだしてから少しずつ食欲も減りだして、体重も次第に落ちていったの……」
話を聞きながら一つだけ思い出したことがあった。
萌音の母親が、俺の母に相談をしてたんだ。
『最近、萌音が食事をしない』と__。
あれは萌音が銀行に勤めだして間もない頃だったような。
五月病かしら…と母が呑気に喋ってた。

