幼馴染みと、恋とか愛とか

即答すると紫苑はプイと反対を向く。
革張りの黒い椅子の背もたれを向けられ、私は苦々しくて唇を噛んだ。


「紫苑」


つい社長と呼ぶのを忘れた。
くるっと椅子を回転した彼はニヤリと微笑み、「何だ」と勝ち誇ったように訊いてくる。


悔しいけどこれも紫苑の戦術の一つか。
まんまと乗せられたような気がする。


「とにかくこれ、置いておきます!」


そっちが拒否するなら私も、って感じだった。
バン!とデスクを叩くように封筒を置き、一瞥してからデスクを離れた。


紫苑はその封筒に手を伸ばす様子はなかった。
私が自分のデスクから見てる限りは、ずっと同じ場所に置いてあったから。



(可愛くない!)


そう言えば、昔から変に頑固だった。
きっと起業してるのを黙っておくように言った時も、ご両親に似た様な態度を取ってたに違いない。


(よくあれで社長が務まる)


いや、あれだけブレないからできるのか。
そう思うと妙に納得もしてしまうが。