こっちは紫苑の指の強さにギクッとしながらも「どこに目を向けてんの!」と怒鳴り、両手を交差して胸を隠した。


「とにかく早く就職しろよ、それが親孝行ってもんだ」


言い渡すとロックを外し、運転席のドアを開けて入ってしまう。ウインドウを開けると「どけ」と一言言い放ち、エンジンを掛けてしまった。


私は苦々しくなりながらも紫苑の言ってることが正論過ぎて何も言い返せず、下唇を噛んだまま道の端に避ける。

その直後に紫苑の車は発進して、奇しくもその車体を見送る格好になってしまった。


「くそー!紫苑め!」


捨て台詞を呟き、ダン!と地面を蹴りつける。
その途端、痺れに似たものが膝の辺りにまで上がってきて、あたたた…と膝小僧を撫で摩った。

前屈みになると乳房が垂れ、ノーブラだったのを思い出して急に恥ずかしくなり家の中に飛び込む。

同時に紫苑の指の感触までが思い出されて、カッと頬に熱が帯びた。


(もう、やぶ蛇じゃない)


ブツブツ思いながら玄関を上がる。
でも、これはまだ序章にしか過ぎなかったんだ。