その日の夜、紫苑は家にやって来た。
両親に詫びを入れると二階に上がってもいいと言われたみたいで、子供の頃のように軽いノック一つで私の部屋のドアを開けた。

ベッドの中で考え事に耽ってた私は、急な訪問に戸惑いを隠せず__。


「いきなり何よ」


バッと布団を胸まで被せ、紫苑が来るのを見遣る。
彼はベッドの側まで来ると足元の床に正座して「頭はどうだ?」と訊いた。


「触ると痛いけど……他はどうもないよ」


気分もいいし吐き気もしない。
そう教えるとホッと安堵したみたい。


「そうか…」


肩を落として息を吐き出す。
納得したなら帰れば?と唇の先まで出かかった。


「でも、萌音、明日は病院に行くぞ」


もう検査の予約も入れてると話す紫苑に、「ええっ!?」と声を上げる。


「俺の仕事も午前中は全部キャンセルした。半日付き合うつもりでいるから」


「ええっ?!いいよ。私一人でも検査くらい行ける」


子供じゃないんだから…と言い張っても、紫苑は頑として譲らない。
両親にもそうすると言ったと話し、それよりも…と話題を変えた。