「俺らも力になるから…
な?お前が倒れることは
柚だけじゃない。俺ら同じ科の医者としても
困ることなんだよ
お前のことを信頼して
頼りにしてるからこそ
倒れられたら回らなくなる。」



「分かってるんだよ…
俺が無理しても意味ないって。
みんなに迷惑かけるって…
でも無理でもしてないと俺…」



「わりぃ…言いすぎた…」



「どうしたら良いんだよ…
どうにもならないのは分かってるよ…
俺の力じゃどうにもならない…
柚があんなに頑張ってた大学を
辞めろなんて…俺には言えないよ…
矢野先生だって苦渋の決断して
心を鬼にして柚のためにって…
全部わかってるけど…俺…だめだわ
大人としても医者としても彼氏としても
まだまだ受け入れられないよ…
なんで柚ばっかりっ…」



「龍……」


「柚が心配で…これから受け止める現実を
柚は前を向いて受け止められるのか…
俺には今こうして一分一秒でも
あいつが喜ぶならそばにいたい」



「龍…柚にはお前だけじゃない。
もちろんお前にも柚だけじゃない


なんのために俺らがいる?
ご両親や矢野先生、俺らは何のためにいる?

柚や龍がぶつかる壁を
一緒に乗り越えるためだろ?
なぁ。ちがうか?

確かに柚が一番安心するのは
お前の声や顔や温もりだ。
でもな?柚は自分のために
お前が無理することは望んでない

矢野先生や俺らの力を借りて
みんなで柚と壁を乗り越えるんだよ
もっと周りを頼れよ…」


「……」


「少なくとも今まで俺は
俺自身の壁も覇瑠との壁も
覇瑠自身の壁も
みんながいて、俺らの両親がいて
そんなみんなのおかげで乗り越えて
今こうして幸せだって言える

みんなが居なかったら挫折して
どうなってたかなんて分かんない

龍にとって俺は、俺らは
そんな存在にはなれないか?
お前が無理して頼らないなら
俺らはどうやって支えれば良いか分からないよ
お前が前を向いて耐えられなくなって
後ろも向かず倒れた時に
後ろから支えることしかできない。
そんな存在には俺はなりたくない」