「そんな前から…
それで…それで龍はなんて言ったの」



「はっきりは分からないって伝えた。
この先どんなスピードで進行するか
柚の体力がどこまで持つか
喘息も貧血もある身体で
風邪ひとつで肺炎になることも
その肺炎が悪化して重症化しちゃうことも
どんな可能性だってある。
それでもどうにかコントロールして
移植まで健康でいれたらって思ったから。

でも、正直なところ
卒業までは順調にいけばできても
その先看護師としてハードなスケジュールを
こなして行くことは厳しいと思う
とも、伝えた。」


「………」



「でもな。どのタイミングで
ドナーが見つかって移植ができるか
それは誰にも分からないから。
柚が看護師になりたいと頑張ってるとき
移植ができれば休学して
卒業も就職も万全の状態でできる
そうなったとき後悔しないように
俺もお母さんとお父さんも伝えなかったんだ

いつかこうして柚自身を不安にさせて
悩ませてしまうんじゃないかって
そういう思いももちろんあった。
でも受験を決めたとき
これを話していたら柚はきっと
志望すらしなくなるんじゃないかって
そう思って伝えることをしなかった」


龍はそこまで話してから
私の頬に手を伸ばした


あ…私泣いてたんだ…





「……そっか…
私に病気のことを考えずに
素直に将来を考えさせてくれたんだね…」