コツコツ、、。
履き始めた頃は痛かったヒールも今じゃ全然痛くない。
どんよりした空が心地よくて足取りが軽い。
「おねーさん。」
ーチッ。
「なんですか。」
「わぁーお。そんな怖い顔しないでよー。」
コイツは二週間ぐらい前から必ず私の最寄り駅で声をかけてくる。
土砂降りの中、構わず歩いて自宅まで帰ろうとしたところに声をかけてきて
断る私にほぼ強制的に傘を渡してきた。
緩いウェーブがかかった焦げ茶色の髪にクリクリした目。
鼻も小さいくせに高くて、顔だけ見れば文句のつけようもない。
ましては180cmくらいあるんじゃないかってくらいの高身長。
「しつこい。」
「ええ!傘!お礼にご飯でも……とか言うところじゃない?!」
ーはぁ。
「恩着せがましいですね。あの時は捨てていいからとか言ってた割に。」