さよならは言わせない

シンと廊下が静まり返る。


花が「え、知り合い?」と聞いてくるけれど、知らない。

こんな人一度見かけたら、すれ違っただけでも2年くらいは覚えてそうなもんだ。

2年以上前にすれ違ったのかもしれないけど、だったらなんで彼は私の名前を知ってんだって話になる。

すれ違っただけじゃありえない。


「久しぶり過ぎて覚えてないかな?俺、千吉良伊織」


・・・誰。



ん?



いおり、って言った?



「え、でも、嘘だ」

「ん?」

「私、”いおり”って一人しか知らないんだけど」


その”伊織”の苗字が千吉良だったかはすでに記憶にない。


「じゃあ、間違いなく俺だよ、それ」

「いや、私の知ってる伊織は女の子なんだけど」

「小さい頃はよく間違えられたね」

「う、嘘・・・」

「小さい頃の写真、見る?凛も写ってるけど」


そう言って伊織は手帳型のスマホケースから一枚の写真を出した。


幼い私が写っていて、隣には・・・伊織。