さよならは言わせない

「凛と同じクラスなんて嬉しいな」



あまりに周りの注目を集めたせいで居辛くなった私は、伊織と人の通りが少ない階段の脇に来ていた。

次の授業までそう時間が無い。


伊織は、私の記憶にある彼女・・・いや、彼とはかなり大きく変わっていた。

同じくらいだった身長はかなりの差が開いたし、思っていたのと性別も違う。


それでも、私の中の伊織は、確かにこんな感じだった。


ニコニコして、私がしたいって言った遊びを楽しそうに一緒にしてくれる。

おままごとだっていつもお母さん役を譲ってくれて、自分はお父さんになるって言ってた。


・・・と、ここまで思い出して気付いたけど、おままごとについてはむしろお母さん役譲られても伊織も困ったに違いない。


「席もそんなに遠くないし・・・あ、今日一緒に帰ろう?」

「いいけど、一人で帰るの?」



祖父の会社を継いだ伯父の息子である従兄は、学校の行き帰りは車で送迎されていた。

なら、同じような金持ち坊ちゃんだろう伊織にも、送迎があるんじゃないの?


「うん、一人。後で詳しく話すね?」


言いたいことはすぐ伝わったらしく、伊織は声を潜めた。