幸いにも桜の織った布はとても評判が良く、次々と売れていった。
それでも、まだ薬を買える金はない。
桜は昼も夜も機を織り続けて少しでも早く、薬を買える金を作らなければならなかった。

「もう少し、あと少し…」

紅葉が散る前に、この指が止まるまで…この羽が尽きるまで…。

桜は機を織りながらこれまでの琉と過ごした日々を思い出していた。
春に桜の花を2人で眺めたこと、琉が桜にくしをあげたこと、雪の降る夜に出会ったこと、そして…冬の寒い日に琉に助けてもらったこと…。

「…琉、琉…!」

どこかに神が存在するのなら、どうか、琉を連れていかないでくれと涙を流しながら切に願った。桜はその日、始めて声を上げて泣いた。