甘い女だと思われるかもしれないが、志望動機を隠す理由はない。


「へぇ」


しかし倫也くんは全く興味を示さなかった。

バカにしている風でもなく、どうでも良さそうな反応だ。



「笑わないの?」


「なんで?」


「いや、子供っぽい理由だなとか」


「思わないけど。どんな理由かなんて、本人の勝手だろ」


兄に志望校を変える理由を問い詰められても適当なことしか言えなかったし、青山先生に対しても誤魔化してしまったのに。

今日会ったばかりの人に話すつもりはなかったけれど、思わず口走って良かった。



「それよりあんたバイトも辞めて金ないんだろ?俺が使ってた参考書、やるよ」


「え?本当に?」


「ああ」


「ありがとう!青山先生にも感謝しないと」


落ち葉を踏みながら2人で歩く。


倫也くんは少し早足だし、ところどころ無言の時もあったけれど、先程のような居心地の悪さはもう感じなかった。