もう新藤さんの送り迎えはない。
ひとり歩く通学路が少し寂しく映る。
花が落ちて枯葉が地面を埋め尽くす秋だからだろうか。
電車の中で参考書を読みながら、警視庁がある駅に停車する度に降りたい衝動に駆られる。
逢いに行きたいが、彼にとってどれくらい迷惑なことなのか考えなくても分かる。
いつもギュッと手を握り、やり過ごす。
衝動的に逢いに行こうとするなんて、ただの子供だ。大人はそんなことはしないよね。
乗ってくるサラリーマンの中に新藤さんの姿を無意識に探してしまう。
移動は車だと分かっているけれど、もしもがあるかもしれないと期待してしまうのだ。
くそぅ、楽しい思い出をたくさん与えてくれたことを恨んでやる。



