数学準備室でラーメンをすする青山先生を見つめる。


「東都大学って随分とランク上げたな」


「無理だとは分かってるんです。今更、志望校を変更することも無謀だと分かっているんですけど、挑戦してみたいです!」


数分前、東都大学に志望校を変えたいと言うと、青山先生は笑わずにいてくれた。


ラーメンにお湯を入れる手を止めないところがまた青山先生らしい。


「周りがとやかく言って変わるような気持ちだったら、さっさと諦めろよ〜」


「最後まであがくつもりです」


学食で買ってきたカレーパンを頬張りながら、青山先生の好きなソーセージパンを机に置く。


「なに?俺に?」


「先生にお兄ちゃんのこと嘘ついたから、お詫びに」


2回目の三者面談には本物の兄が来てくれた。

当然、青山先生は首を傾げることとなり、事情を説明せざるを得なくなった。


「あー、警察絡みの案件なんだろう?俺が黙ってて済む話なら、誰にも言わねぇよ。ばーか」


大きな口を開けてソーセージパンにかじりつく先生には敵わない。


「ありがとうございます」


「本当に悪いと思うのならば、授業ちゃんと出ろよな」


「それは…」


「こらこら!」


頭を軽く小突かれる。

相変わらず距離が近い。


「お前が頑張るなら、俺も応援すっから」


「青山先生、大好き」


「おまえも俺に気が?」


「もう冗談は良いから、ラーメン伸びますよ」


東都大学。
新藤さんの母校。

高すぎる目標だけれど、真剣に進路を考えた時に一番に望む大学だった。

一旦、アルバイトもやめて学校にいる時間以外は勉強に費やすことにした。
同じ大学に通えたとしても新藤さんが戻ってくるとは、もちろん思っていない。