窓ガラスに大粒の水滴が無数につき、空模様は最悪だ。

きっと傘をさしても役に立たないだろう。


窓から視線を移して、手際良く荷物をまとめる男を見つめる。


こんな時でさえ私は泣けない。
涙など、枯れた。


かけるべき言葉は見つからない。
着々と衣類と少しの雑貨がバッグに吸い込まれていく。

ああ、こんなに荷物が少なかったんだね。


いつも綺麗に畳まれた衣服を雑にバッグに押し込む彼は、一刻も早くこの部屋を出ていきたいはずだ。


「ーーこんなこと言う資格はないけど、身体には気を付けてね」


優しい声色で、優しい言葉に
そっと頷く。