「今日って、千佳、空いてる?」
私はそんな思いを振り払って、笑顔で千佳に聞いた。
ところが千佳は、さっきの笑顔から顔がしゅん、と曇る。
「ごめん、恵。今日さ、野球の練習が入っちゃって。基本的に野球の練習は休日なんだけど、なんか試合がもうすぐだからって入れられちゃったんだよね」
ほんとごめんねー、と謝る千佳に、私は慌てて首を振る。
「へーきへーき!気にしないで。今日は勉強ちょっと休憩しようかなーって思ってたぐらいだから」
「そっかー。恵、頭いいもんね」
またもしゅんと落ち込む千佳。
受験まであと一年半。すでに二年生になってしまった。まだまだに見えてもうすぐなのだ。頑張らなくてはいけない。
落ち込む千佳を笑顔にしようと話題を変える。
「そーいえばさ、千佳はどこの高校に入るつもりなの?」
「えー、わたし?んー恵とかは頭いいからもう決めてるみたいだけど、わたしバカだからさー。まだ決めてないんだよね」
そういう千佳ははあーっ、と息を漏らす。
嘘。私は知っている。千佳は、野球に専念してるのに、勉強一筋の私よりも頭がいいことを。

