「できます。

しかし、自殺したがっている人間を引き止めるのってのは大変でしてねぇ。

なにしろ幾ら傷を治しても自分から死にたがっているのですから、

先程のあなたのようにすぐまた死のうとしてしまうのです。

それで、こうして直接話しかけて、死んではならないことを納得してもらうよう説得するわけです。

さすがに生命塊の一部でできているあなた方の意思までは強制的に修正できませんから」

 なんとなく納得したようなしないような複雑な心境になった美雪は、少し考えて悪魔に訊いた。

「それじゃあ、人間って死ぬとこうなるの?」

「ええ、まあ、運命によって死んだ人間には逆に死んだことを諭すために、

直接話しをしなくてはなりませんからね。

その後は先程言いました通りです」

「ふーん、何かつまんないの」

「そうです。おもしろいなんてものではありませんよ。判りましたか?」

「うん」

 何となくそう返事した途端、美雪は悪魔のぼんやりした顔が笑ったような気がした。

「やっと判ってもらえましたか。

いいですか、もう二度と勝手に死のうなんて思わないでくださいね。

それではわたくしはこれで」

 いきなり悪魔の右手が美雪の顔を包み込んだ。

「えっ、なに?」

 視界と意識が暗闇に落ちるのは同時だった。