「あの子は義理の息子にソックリでな、少々不器用なんじゃ」

覚悟を決めた時、名誉会長が口を開いた。

声が少し柔らかくなったと思ったら、

「可愛い曾孫を宜しく頼む」

最後は顔まで優しくなって、しかも私に頭を下げた。

怖い人かと思っていたけれど、優しい人だった。

神島家の人達を騙しているのが益々心苦しくなった。




挨拶を済ませたら、すぐに神島家から出ることになった。
彼のお母様には引き止められたけれど、海さんが予定があると言って断った。
私に気を遣ってくれていると思ったら、本当に予定はあった。
神島家を出て向かうのは、私達がこれから一緒に住む所。
海さんが用意してくれた家は高層マンションの二十階の部屋。
ベランダからの見晴らしも良いし、大学までも近いという素晴らしい立地。