「椿、何読んでるの?」
「基本の料理・初級編」
次の日の夕方。バイト先の控え室で料理本を熱心に読み込んでいた私に声を掛けたアリサ。
「椿がどんどん奥さんになっていくね」
私って、奥さんに見えるんだ。
勝手に顔がニヤけてしまう。
「おはようございます」
そこに彼と似た声が。
振り向くと洸君の姿。
実は洸君とはあの日以来、会ってない。
すると洸君と目が合った。
私は咄嗟に視線を外した。
「久しぶり」
今、目は合っていない。
でも絶対に私に言った。
視線を感じるし。
「ひ、久しぶり」
私は笑顔を作ったが引き攣ってしまった。
目も泳いだ。
気まずくて真っ直ぐ洸君を見れない。



