Deal×Love

「猫の手の横に付けて下に包丁を落とす」

狼狽えまくる私を余所目に海さんは淡々と説明をし始める。

暫くすると突然海さんが私から離れたようだ。
背中の感触が消えたから。

「はい、やってみて?」

私の横に戻っていた海さんが言った。
まな板を目を向けると、いつの間にか切れている玉ねぎ。


「緊張しすぎて全然見てませんでした!」

「椿って面白いな」


こんな感じでお料理教室は始まった。

だけど緊張は最初だけ。


「調味料は醤油とお酒と蜂蜜を用意するよ。分量は……」

初めてのことが多すぎて覚えるのに精一杯になったから。

「ちょっと待って下さい!」

覚えられる自信が無くなった私は、部屋からノートとシャーペンを取ってきてメモを取ることにした。