私は勢いよく立ち上がるとそれを受け取る。

「ありがとうございます……っ」

彼女を置いて私を優先してくれたの?
飛び出した私を心配してくれたの?

そう思うと胸の奥がほわっと熱くなる。

「じゃあ」

だが、踵を返した海さん。

え?と私は唖然としてしまう。

これを届けに来てくれたのは私が心配とかじゃなくて、鞄を忘れたら携帯も入ってるから困るから?
後は勝手に帰ってってこと?

海さんの気持ちに気付いたら、涙が目の奥から這い上がってくる。

期待した自分が、惨めで、情けなくて、涙が零れないように私は目の周りの筋肉に力を入れるが、見ている海さんの背中は益々ボヤけていく。