「スリー、ツー、ワン!」

「えっ?」

どこからか、声が聞こえたかと思うと、
いきなり部屋の電気が消えた。

──ザアッ──

開けっ放しになっていた窓から、強い風が入ってくる。

反射的に振り向くと、そこには──

「そこのお嬢さん。なぜ泣いているんです?私がその涙を盗んで差し上げましょう。」

黒いマントに黒いスーツ。

コスプレかと思うほど変な格好をした男が
窓の縁に座っていた。

「蓮。」

それは、隣の部屋に住んでる、蓮だった。

「まーた、お前は一人で我慢して。寂しいなら、寂しいって、言えば良いのに。」

蓮は窓の縁から降りて、部屋に入ってくる。

「な、なんで……?」

「んー?だって、隣の部屋から微かにすすり泣く声が聞こえたから。知ってるか?
このマンションの壁、結構薄いんだぜ。」

「蓮……。また、家のブレーカー勝手に
いじったでしょ。」

「げっ。良いじゃんか。電気消さねーと雰囲気出ねーんだもん。」

「何よ、それ。」

「せっかく、励ましに来てやったってのに、何だよーその態度はー」

「ふふっ。はいはい。ありがと。」