家に入ると玄関で母が待っていた。


「おかえりなさい」

「た、ただいま」


私が返事を返すと母はすぐに私を客室へと行くよう言った。


「制服のままでいいから」


なんなんだろう…不安にかられながらも客室へと向かう。


「失礼します」


ゆっくりと和室である客室の襖を開ける。

そこには私の父と見知らぬ男の人二人がいた。

一人は父よりも少し若いくらいの男性。もう一人は、私と同じくらいの年齢の男の子。

すごく、綺麗な顔だな…と思わず呆ける。

彼は私と目があうとふいっと顔をそらした。

やばい、見すぎちゃったかな。

私は彼がこれ以上、嫌な思いをしないよう顔を父の方へと向ける。


「この二人が誰だかわかるかい」
と父が聞く。


え?会ったことあるのだろうか。

全然、身に覚えがないのだけれど。

でも覚えてないなんて言ったら失礼だろうし…。

なんて返そうか困っていると。


父は
「いや、さっきの質問は気にするな」
となかったことにした。


一体、何なんだろうか。

今日の律夜の態度といい、今日は変な態度をとられることが多い。

そして父があの言葉を口に出したことであのとき、家に入る前に感じていた幸せが崩れ去る。



「その、な。実は私の隣にいる方はある会社の社長なんだが…その息子さんが」

「?」


「お前のことを、婚約相手にしたいと」






…………はい?