約束してた時間の10時。

「な、なぁ、俺の格好変じゃない?」

そう焦りながら聞いてくる優弥は理依奈と初デートらしい。学校帰りとかに一緒に帰ることはあってもやっぱり緊張するみたいでずっとこんな調子。

「大丈夫なんじゃない?普段通りにしとけばさ。」

「そ、空は余裕なんだな。」

「あのさ、俺と和香は付き合ってるけどそれ以前に幼馴染だったわけ。逆に緊張するようなことがあるか?」

「た、たしかに。」

「だろ?だからこんなもんなの。」

「そっか…。あ!来た!あれじゃない?」

「あ、ほんとだ。」

優弥が指差した方を見ると少し離れたところに和香と理依奈がいた…だけど。

「まって俺今日1日心臓持つ気しねぇよ。」

優弥は顔を真っ赤にして言った。それもそうだ。俺でさえちょっとやばい。
だって2人してあまりにもいつもと違いすぎる。理依奈はまだわかる。でもなんで和香まであそこまで違うのかだ。

「あ!空ー!おはよ!」

「優弥も、おはよっ。」

「「お、おはよ。」」

「ん?なんでそんな2人してそっけないわけ?見てよ!理依奈めちゃめちゃ可愛いでしょ!」

「う、うん。可愛い。」

「あ、ありがとっ。」

「うわーー。いいないいなっ!理依奈かわいい!!」

「和香のおかげだよっ!ありがとう!」

「いーえっ!じゃあ行こっか!…って空?大丈夫?今日静かだね?」

当たり前だ。普段和香は髪をおろしてる。ポニーテールなんて久々に見たしなんか可愛いって思ってしまったんだ。

「そ、そうか?いいから行くぞっ。」

「うん!行こ!!」

褒めると和香は調子に乗るからここだけの秘密。

「なぁお前も、意外と照れるんだな。」

ボソッと俺の横で優弥が言ったのは聞こえなかったことにする。