それから30分ぐらい誰も話さなかった。

母さんは中々整理がつかないのかずっと泣いていた。
父さんは黙ってただうつむいていた。


「空。どうしても治療しないのか?」


そう言ったのは父さんだった。



「あぁ。治療するつもりはない。」


「空!!」


「母さんごめん。でも俺どうしても高校に通いたい。病気を知って自分の生きられる時間を知って残りの人生どうしようって考えた時さ。病院で過ごすのは嫌だったんだよ。」


「…。」


「俺は少しでも家で父さんや母さんと過ごしてたい。それに高校だって出来る限り通いたい。部活は辞めないといけないとしても高校に通うことはやめたくないんだよ。」


「空…。」


「それに和香のそばにいたい。」


「和香ちゃんの…?」


「あぁ。目覚めたとき和香が今まで見たこともないぐらい悲しそうで不安そうな顔をしてたんだ。それを見て俺和香のそばから離れたくないって思ったんだよ。」


その場はまた沈黙になってしまった。

でも。


「そうなのね。」


母さんが言った。


「そこまで空がいうなら思う通りにやりなさい。」


「母さん…。」


「ありがとう。こんな親不孝者でごめん。」


「何言ってるの!親不孝者じゃないわよ?空は私たちのところに生まれてきてくれた。ここまで育ってくれた。まだ高校生なのに1人の子を大切にできる優しい子に育ってくれたじゃない。」


「そうだ、空。母さんの言う通り。空はもうずっと前から親孝行してくれてるよ。」


「母さん、父さん。わがままでごめん。だけどありがとう…。」


心の底からそう思った。
こんな親不孝の子供なんているだろうか。
病気にはなるし治療はしない。だけど学校には通いたい。
それでも2人はそれを許してくれた。
本当に感謝しかなかったんだ。