今回の旅行には、彼女の兄・一毅(かずき)くんも来ていた。

彼は、一時は命も危うい状況だったが、医者も驚くほどの回復を見せ、今では杖が必要なものの、自力で歩けるようになった。

「ほんと、一毅くん良かったよな」

俺が言うと、

「うん」

美緒は心底安心したような声で返してきた。

一毅くんと俺は友達のような関係で、それは彼が気を遣われるのが嫌だからだ。