「お母さん、ただいま」

「お帰りなさい。楽しかった?」

「うん」

庭で花の手入れをしていた彼女のお母さんが、顔を上げた。

目が合う。

「…あなたが、拓海くん?」

「あ、はい。長谷川拓海です。初めまして」

美緒のことを横目で見ながら、お母さんは続ける。

「この子ったらね、今日はデートなんだってね、昨日は全然寝れなくって。朝も、すごい勢いで飛び出して行ったんだよ」

みるみるうちに、美緒の顔が、今まで見たことがないくらいに赤くなった。

「じゃあ、あたし中に入るから」

彼女は半ば強引に紙袋を奪って、家の中へ消えていった。