「え…それって、どういう事?」

彼女が俯く。
心なしか、その頰が紅い。

「だから、ね。あたし、拓海くんのことが好きなの」

恥ずかしそうにする彼女を見て、俺はまた、彼女に惚れてしまった。

「そうなんだ」

「ん?」

「なんでもない」

このまま俺も、想いを伝えたらどうだろうとも思ったけど、それはやめた。

待ち構えていたようになってしまいそうだったから。

「あっそうだ!明日試合なんだよねっ」

彼女が照れ隠しのように言う。

「そうだけど、何?」

「あたし、観に行きたいんだけど」

「…良いけど」

「何?」

「いや。来るのはいいけど、騒ぐなよ。試合の邪魔になるから」

すると彼女は微笑んだ。

「断られるかと思った」

「え?」

「ううん。じゃあ、また明日ねっ!」

「ああ、また明日」



彼女は走って、俺の家とは反対方向に消えて行った。

一歩一歩、彼女との約束に胸を弾ませながら
進む。

見上げた空は、日が沈み、夕方から夜へ変わろうとしていた。