生意気オオカミの虜


“ 諦めなきゃダメかな? ”


太陽さんの言葉には気持ちがあった。

それは言葉だけでなく、顔を見ればわかった。



「 羽奈ちゃんにフラれてるよな、俺… 明らかに。でも、俺の事知ってほしいって思う。
俺が羽奈ちゃんを知りたいように 」



この人は… 美容室・美風館の人気スタイリストだ。

その彼がなぜ私みたいな平凡な女を?

私に魅力があるの?


まさか、そんなのない。



なのに… 太陽さんは私を真剣に見つめてる。

まるで今にもキスしちゃいそうなくらい……



…って!!



頭の中で考えてる間に太陽さんの唇が接近してた。



触れる…

ダメ…

太陽さんっ……



「 …ダメです 」



私は顔をそらせず手の指数本で太陽さんの口を塞いだ。

数センチあるかないか、そんな距離に唇があったから。

今キスされたらきっと流されてしまいそうで…

凛を傷つけてしまいそうで…


何より、私は私の心を裏切りたくはない。



「 羽奈ちゃん、冗談だよ 」

「 へ… え、あ…… えと、あの…… 」



冗談って?

だってキスしそうだったよ?

あれでも冗談なの?