この日美世のバイト先、珈琲館ランプに寄って、その帰り小雨降りだした中を傘もなく一人バス停からアパートへと帰っていた。
外灯少なく小雨がより静けさを漂わせていた。
辺りには人気もない平日の深夜に近い時間、私の後ろを見知らぬ人が着いてきていた。
それに気づいた時、私は凛の言葉を思い出して嫌な緊張感と怖さで足がもつれそうで早歩きになり始めた。
……怖い、絶対誰かいる。
どうしよう振り向けないし止まれないっ
美世に電話する?
電話しても来れないじゃん、頼は?
そうだ頼なら……
あ、今日は深夜までバイトだ。
凛!
そうだよ、凛がいるじゃん!
焦りながらスマホを手に画面に凛の番号を出して慌てたせいか落としてしまった。
拾い上げようとしゃがんだ時、私は背後に気配を感じ振り向いて……
地面に尻もちついてしまい身動きも声すらもでなかった。
見知らぬ人の手が伸びてきたのを視界に捉え目をギュッと閉じて男のうめく声が聞こえた。
遠ざかる足音、固まる私に触れる誰かに驚愕し叫ぶと声がした。
「 羽奈!俺だ、凛だ!」
凛……?
聞きなれた声に恐る恐る顔を上げて手の隙間から見てみると、まさに凛がいた。
「 凛… 凛っ!!」
地面にへたりこんだままで凛へ腕を伸ばして抱きついた。
凛……
「 羽奈、ったくよ~ 俺の忠告聞かねぇからだぞ 」
「 ん、ごめん… 凛、怖かったぁっ 」
凛は私が落ち着くまで抱きしめてくれていた。
雨がさらに降りだして私は凛と急いでアパートへと二人で走った。



