生意気オオカミの虜


愛弓ちゃんの言ってる事は少なからず理解してる。

何せ当事者だから。

それにしても見てたかのような物言いに内心動揺した。




「 あ、電話! …お電話ありがとうございます、美容室 美風館、受付の甚野でございます 」



私と凛は幼馴染み……

先に壁を越えてきたのは、凛。



「 はい、かしこまりました。在庫がございますので取り置きしますね。はい、ありがとうございます、お待ちしております 」



凛、どうしてるかな……

部屋着って確かないよね?

下着は… あー、凛~ どうか引き出し触りませんように。



「 お電話ありがとうございます、美容室… 」

『 羽奈 』

「 美風… え? その声…… 」

『 俺、凛 』



やっぱりー!!



「 なんでかけてくるの、私仕事してるんだからね 」



小声で言うと、凛の声が耳に突き抜けた。



『 …羽奈がいないから、寂しいんだよ 』



そう言って切れた電話。

トクン、トクン……

なぜかわからない心音に戸惑う。



「 羽奈ちゃん誰だったの?」

「 愛弓ちゃん、後をお願いしてもいい?」


行かないと……



そう思った。


すでに約束の1時間は過ぎていたため凛は待ちきれず電話してきたに違いない。


太陽さんや他のスタッフに挨拶し店を出た。