生意気オオカミの虜


「 お電話ありがとうございます、美容室、美風館 受付の甚野でございます 」



私はこの美容室にバイトに来て電話対応している。

予約の電話、お客様からの問い合わせ、スタイリストへ繋げる仕事。

合間に掃除もする。



「 助かる、羽奈ちゃん 」

「 いえ、私こそすみません 」



私に声をかけたのは店の一番人気のスタイリストで地域の紹介冊子やネットでも顔を出してる彼、イケメンスタイリスト。


堀場 太陽、27歳。



「 羽奈ちゃんいてくれると、お客さんに集中できるから助かる 」



あ~ 優しい人!

頼とは違うよ~



「 ねぇねぇ羽奈ちゃん、太陽さんと何話してたの?」



彼女はもう一人の受付担当、木下 愛弓。

主に二人いる時はパソコン入力や言われた発注、お客様のカウンセリング情報を書き込む。

そして太陽さんに恋してる、どこまで本気かは謎。

ただ嫉妬深い所がある美女だ。



「 で、今日は1時間だけなんだって?」

「 そうなんだ、ごめんね。看病しなきゃいけなくて… 」

「 看病? 身内の?」

「 まぁそうかな、幼馴染みなんだけど、両親が今旅行中で私がね 」



頼に押し付けられたのよ。



「 幼馴染みかぁ それって男だよね?だとしたら…… んふ 」



何…?



「 今までと違う幼馴染みの一面を見るかも。だって、男女の幼馴染みほど恋に不確かなものでしょ 」



は?

愛弓ちゃん、どうかしてる。

と言いたいけど、キスしちゃってるもんな~

言わないけど。



「 幼馴染み同士で恋に発展するかどうかなんて、男女だから不確よね…
つまり、どちらかが幼馴染みの壁を越えて初めて意識して! 始まるのよ~ 」



愛弓ちゃん、何者?