何を言い出したのか、頼の言葉に耳を疑った。
私をいい女だとかそれすら聞き流してしまうほどの言葉だ。
「 羽奈、ほんとか?」
「 頼…… それ信じるの?凛が言ったの?」
「 凛が昨日宣言したんだよ、この俺に向かって生意気にも。羽奈はもう俺のだからって 」
もう?
もうって……
「 頭痛い… 頼、凛が何をどういう意味で言ったかはわかんないかけど、私にキスしただけだから 」
まったく、あのガキめ!
「 キス、した?」
「 あ…… いや、まぁしたわけじゃなくて、されたの!そう、されたの!」
「 羽奈… 凛が好きか?」
え…
「 なんで、好きだよ普通に。弟みたいなもんだもん 」
「 知ってるよ、俺が言いたいのは凛を男として好きかって事。
あいつは可愛い生意気な奴だけど、男だよ 」
頼……
そんなの知ってるよ、知ってるけど。
なんでそんな真剣に……
「 凛が羽奈を好きなのは知ってた、でもキスするほど本気とは思ってなかったから。
羽奈はどうなのかと思って 」
あ~ そうなんだ。
兄貴として、のだね。
でも、凛は好きだけど男としてなんて見たことなんかないのに今さらどうしろと?
私はイケメン彼氏を作って、デートして……
そんな大学生活をする予定なんだよ。
年下の高3男子に、キスされたくらいで動揺なんかしてられない。
そうだよ、私は私の恋の道を探すんだから。
「 頼、凛には悪いけど… 」
「 わかってる。凛みたいなガキより俺のがいいに決まってる 」
……バカだ。
我が幼馴染みながら、情けない。
イケメンの正体がこれとはね。
頼も凛も、今の私には眼中にないの。
「 羽奈、なるべく凛を傷つけるなよ 」
はいはい、そうだね。
可愛い生意気な弟君だもん、わかってる。
にしても…… 凛のあのキスは、良かったよ?
初めてとは思えない。
ううん、考えるな!
頼と話していると、凛の学校から突然の電話。
「 え… あ、お世話になってます。はい… はい、そうですか… わかりました、すぐに行きますので、はい 」
頼が電話を終えて聞くと、凛が階段から落ちたとの連絡だった。
私と頼は慌てて病院へと向かった。



