「もしかしたら来るかもって、店抜けて見に来てたんだ」 そう言って笑う彼方は、昨日とは違う雰囲気に包まれていた。 派手なスーツを着て、どことなくクールな感じ。 「っとゴメン、寒いよね。コレ着てっ」 しかし、自分の上着を差し出すその笑顔は優しさに満ちていて、日美はホッと息をついた。 「あ、いいです。仕事、戻ってください」 一瞬、彼方の優しさに甘えそうになった日美だが、慌ててそう言った。