-…上着、返さなくちゃ 朝の光が差し込むリビング。 帰ってきてから、ずっとそこに座り込んだままだった。 幸い今日は土曜日で、今から一眠りできる。 彼方のジャケットを腕に抱えたまま、日美はトボトボと自分の部屋へ向かった。 いつもなら怖くて眠れずにいるが、今は不思議と落ち着いてベッドの中にいられる。 それは、心が彼方のことでいっぱいなのと、彼の上着から微かに漂う香水のせいなのだろうか-… 日美はひさしぶりに、暖かい気持ちのまま眠りについた。