涙がアルバムに落ちそうになって、慌ててぬぐう。
泣いてるのかと言う声に、私はもうどうでもいいやと開き直ることにした。もう、どうせ先輩は卒業してしまうから。
先輩はどうせ、いなくなってしまうから。
「私だって好きだったのに」
「ま、じかよ」
驚いた先輩の顔はゆがんでいたけれど、それでも赤くなっているのがわかる。構うものか。先輩は大きい。頭ひとつ分くらい違う。
両思いだったのは嬉しい。
すごく、嬉しい。
けれど私は再び、どうしてと思う。
「もっと早く言って欲しかった。もっと早く私が告白していればよかった」
いきなり両思いになるなんて、ないだろう。どちらかが好きになって、その気持ちはゆっくり大きくなる。
好きになって欲しくて、知ってほしくて知りたくなる。好いてほしくなるたび、自分の嫌なところを知らないでいてほしいとも思う。
後悔ばかり。
こんなこといっても意味がない。わかっている。けれど、どうしてもいいたい言葉を私は言う。
「先輩は、どうして卒業しちゃうんですか」
思わずぶつけた言葉は、無言で頭を撫でてくれる先輩を悲しませると知っているのに。
了
2018/4/3


