「じゃ、いたってことですか」
先輩の話はなんだか、過去形に聞こえた。いたけれど、進学するから別れたと。
付き合っていた人でもいたのか?それとも好きな人がいたけれど、その人とは離れてしまうから?
アルバムのフリースペースは真っ白だ。私が一番でいいのだろうかと思う。青色でいいだろうか。いいや、オレンジにしよう。
「過去形じゃなくて、進行形。だから人がいなくなるのを見計らってきたんだけど―――葉月のところに」
書こうとしていた手が止まった。
顔をあげることが出来ない私に構わず「気がつけば好きになってた。でも、俺は案外臆病だった」と先輩の言葉が聞こえる。
「笑いあえる先輩と後輩っていう立場を壊したくなくて」
そんなの。
私だってそうだ。
告白してふられたらっていうのが怖かった。好きだと知られて今までと同じように笑いあえる保証もなかったから。私だって臆病だった、
だから言えなかった、と先輩の言葉に「ちゃんと言ってほしかったですよ、先輩」という。
我慢してたのに。
いいたかったのに。


