「探したんだぞー。いねえんだもん」
「探してたって、何か用事ですか…?」
「アルバムにコメントもらおうと思って」
なんだ。
そう落胆している自分がいて、何を馬鹿なとせめる。何を期待しているんだと。期待。そう、期待していた。
ブレザーのネクタイを緩め、いつもの少しやんちゃな格好でそこにいるから、本当に卒業式が終わり、先輩はもう学校に来ないということが信じられない。
けど、事実だ。
先輩は卒業証書をもらっている。胸元には卒業生の証である飾りが少し曲がってつけられていた。
「ここに書けばいいんですね」
ペンケースを出しつつ「先輩、誰か好きな人いなかったんですか」と最後だから少しだけ、大胆に聞いてみた。
先輩はうーんと少しだけ迷った。
「俺さ、進学するだろ?だからここで付き合っても遠距離になるから、俺はいいとして、女の子の方が辛いんじゃないかなーとか思う」
意味深すぎる。
俺はいいとしてって。遠距離になっても先輩は平気だけど女の子のほうがって?


