もし、という話はいくらでもできるし、妄想も得意だけど、あくまで想像や妄想だ。現実じゃない。

 現実はほら、卒業式という文字が目につく。

 たとえ私と先輩が同級生だとしても、先輩はいい友達どまりでしか私と接してくれはいだろう。先輩はそういう人だ。



「お、いたいた」


 玄関が賑やかなのは卒業生と在校生がごったがえしているからだ。
 
 私は誰もいなくなった教室で荷物をまとめ、さてどうしようか迷っていた。先輩に会いに行かなくてもいいのかと。これを逃したらずっと会えない気がする。


 どうする。どうする。


 自問自答していたところ、不意にそんな声がしたものだから、がたんと机をゆらしてしまった。