かけがえのない人



その本は雨にうたれてびしょびしょになっていた。

そしてすごく重かった。

水の重さでとかではない。

これはわたしの罪の重さだと思った。


彩香がそれほどまでこの本に思い入れがあるなんて知らなかった。

自殺未遂までしてしまうほど、大事な本だなんて知らなかった。

でもそんなのは言い訳だ。

どんなものであれ、どんな形であれ、彩香をはぶいていたのも、本を外に放り投げたのも事実だから。