「……大丈夫ですか?」


俺が立っていたのは扉から離れた電車の中の方。
その心配する声は、扉付近から聞こえてきた。


なにかあったのだろうか。
気になって、高い身長を活かして覗きこんでみると。
そこにはうちの制服を身にまとった女子がうずくまっていた。


……気分が悪いのか?


次の停留所は学校の最寄り駅だ。
幸運なことにしゃがみこんでから数分で停車駅に辿り着いた。


それでも人は冷たいもので。
彼女を避けるようにみんな電車を降りていってしまった。
声をかけた女性が周りに助けを求めるように視線を送っても。
誰ひとり、助けようとはしなかった。


怖がられないだろうか。
俺が助ければ、迷惑をかけないだろうか。


そんな考えがよぎったのは一瞬で。
気付けば身体が動いていた。


「俺が、運びます。」


「えっ、……ひっ!」


助かったという顔をした声をかけていた女性は。
俺の顔を見るなり怯えた顔をした。


傷つく心に蓋をして。
気にしないふりをしてそのまま電車を降りた。


抱き上げた女子は思っていたよりも軽くて。