噂じゃない剣崎くんを知りたい。
そう思った。


お弁当を食べ終わった後。
教室まで送り届けてくれた。


私の歩幅に合わせてゆっくりと。
猫背のまんまるな背中に。
ふわふわと揺れるオレンジ色の髪の毛。
光で透けたその髪を。
少し、触ってみたいと思った。


まだ、知らない剣崎くんがたくさんいる。


怖いことには変わりないし。
もしかしたら噂通りの人なのかもしれない。


それでも昨日抱いていた悪い印象はなくなっていて。
今見た、自分のみた剣崎くんを大切にしたいと。
そう思った。


「じゃあ、また。」


それだけ言うと剣崎くんは小走りで帰っていった。
そのまんまるの背中を見つめながら。
明日も一緒に食べられるのかな、
なんてことを考えている自分がいた。


口の中は剣崎くんの卵焼きの味で。
ほんのり甘くて、しょっぱい。
癖になる味がした。


今度作り方教えてもらおうかな。
言葉選びに気をつけて……。
そう思いながら、少し笑みを浮かべた。