*** 『このネクタイ、私が一目惚れして買っちゃったんだけどね。似てるの、あの海の色に。』 休日は二人でドライブするのが好きだった。 海まで片道一時間弱、他愛もない話で盛り上がったり、各々(おのおの)の時間を過ごす。 海風を含んで緩くウェーブを描く彼女の髪が好きだった。 『なんでだろうね、ここに来ると嫌な事も全部忘れられるの。』 あの日を彩(いろど)ったネクタイを首に締めて、家を出た。 君が好きだった花を買う。白く美しい百合の花。 その純粋な色が酷く、憎らしく愛おしい。 ***