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「また仕事に没頭して休暇取らなかったんでしょ?前に体調崩した時もそうだったもん。」
頬を膨らませて小言を呟く彼女は何だか少し嬉しそうに見えた。
そういえば、この時期も仕事が忙しくてあまり彼女に時間を割いていなかった気がする。
「梨乃、せっかくの休みなのにごめんな。」
キョトンとした表情を見せる彼女はすぐに鼻の頭を赤く染めて、フワッとそっぽを向く。
別に、と小さく声がして思い出す。
これは彼女が不貞腐れている時の仕草だと。
手を伸ばして綺麗に整えられた真っ直ぐで痛みの無いその栗色に触れる。
「ほんとは怒って、ない。」
潤ませた瞳は僕だけを一転に見つめていた。
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