しばらく歩いた。

段々不安になっていく。

「これが現実なら森の中を遭難してるだけじゃん…。」

最初から怖くなかったと言えば嘘になる。

現実逃避する癖はこの壮大な森の中で私を混乱させる。


すると川の流れる音が聞こえた。

目の前に現れたのは小川とそこにかける小さな橋。
霧が濃かったら多分この川に落ちていただろう。

橋を渡ると少し急斜面が現れた。

さっきからずっと思っていたが、この山は人が行き来しやすい道があるため、この近くに人がいるとどこかで確信していた。

この急斜面もだ。
いびつな形の岩が階段のようにして置かれている。

露とコケで滑りそうになりながら登る。
昔から自然の中で遊ぶ事は嫌いではなかった。
長年現れなかった冒険心は少しずつ芽生え始めていた。

この先に何かがある。


なんとか登りきると、平坦な小道が続いた。
肩まで生えている草が行く手を阻む。
草をかき分けて進んだ。

「映画でありそうな場所だな…。」

小道を抜けた途端、
足に絡まる草のせいで躓いた。

中学の頃のジャージのズボンを履いていたが運悪く半ズボンだったため、葉の擦れた切り傷がたくさん脚に付いていた。そして膝を擦りむく。

この傷が皿の破片でできたものじゃないだけマシだ。

見上げると、急に辺りが全ての太陽の光を注ぐかのように明るくなっていた。とても眩しい。

それは周辺の沢山の木々や草が急に途絶えたから。

乾ききった砂の上を歩く。
さっきの坂くらいの急な坂を登る。
日差しが暑い。
明るすぎてまだ目が慣れない。

坂を登りきった。


「……。」

私は目の前にある光景をすぐに受け入れることができなかった。

目を細めて凝視した…。