意を決したように私が名前を呼ぶと、アンナさんは不思議そうに振り返って首を傾げる。



「……明日。旅に、出ようと思います」


「え……?明日?」


「はい。……急なんですけど」



突然告げられた言葉にアンナさんは信じられない、とばかりに驚いた表情を浮かべた。

その表情を見ると、申し訳なさそうな寂しそうな表情をしながら私はこくりと頷く。



「……ティナちゃんがそう決めたなら、私は何も言わないわ。寂しくなるわね」



アンナさんはそっと微笑みながら、やはり寂しそうにぽつりと呟く。



「アンナさんには本当にお世話になって……」

「あらあら、いいのよ。私も凄く楽しかったから。お金の方は、明日払うわね」


「……はい」



寂しそうにしているアンナさんを見た私は、目を伏せながら感謝の言葉を告げようとしたのだが。

それを遮るように言葉を紡ぐアンナさんが微笑みながらそう言うと、ただ、私は頷くことしか出来なかった。