あの日以来――そう、互いの過去を話し合って以来、ラウルはよく私の元へと訪れるようになった。

とは言っても仕事はあるのでそれほど多くは話せないのだが。


それに文句を言うことはせずに、ラウルは近くにあるベンチに座りながら私が仕事を終わるのを待っている。



そんな様子をアンナさんは嬉しそうに笑って見ていた。

それがどうしてなのかは今の私には何となくわかるので、何も言わずに僅かに苦笑を零す。



アンナさんは、私がラウルへ良い影響をもたらしているのではないかと言っていたが、果たしてそれはどうだろうか。


ラウルに視線を向ければ出逢った時から変わらない優しい微笑みを向けてくれるので、それでいいかなと思えている。



ここに居たら、忘れられるかもしれない。限られた日数しか居られないけれど、もしかしたらその間に忘れられるかもしれない。