目の前にいるのは、初めて見るぐらいに申し訳なさそうに苦しそうな表情を浮かべている、大好きな人。


そんな顔をさせたい訳じゃないのに。ただ、一緒に笑って居たかっただけなのに。



幸せばかりを貰っていた。いつからか、それは偽りの幸せだったのかもしれないけれど。

でも、貰ってばかりだったから今度はきっと私が返す番。


目の前に居る人の幸せを紡ぐ相手が、私じゃないのなら。



「……貴方が大好き。本当に、大好きだよ。――だから、忘れる。貴方と作った思い出も、溢れるぐらいにある貴方への思いも、全部」



忘れてあげる。それが、貴方の幸せに繋がるなら。



大好きだって言うこの気持ちも。私の全てを作り上げていた、貴方との思い出も全部。

……忘れるから、もう、名前を呼ばないで。「ごめん」なんて謝らないで。そんな悲しそうな顔を、しないで。



――さよなら、大好きな人。私の世界。



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