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自然に囲まれた小さな村。

何も無いと言われる場所かもしれないけど、私にとってはとても大切な場所だった。



あの人が居たから。たまにしか帰って来ないけど、私を愛してくれるただ一人。


私も大好きだった、初めて好きになった人。

いずれは、一緒になれるかもしれない、なんて夢を描いたりして。


優しくいつだって笑ってくれてたから。帰ってきたら抱き締めてくれた。


ずっと、ずっと、一緒に居てくれたから――誰だって、そう思ってしまう。



でも、そんなのただの甘い幻想でしかなかった。私が描いた、馬鹿みたいな、幻想。



帰って来たあの人と、いつものような時間を過ごせると思ったけれど。

それは突然に告げられた、別れの言葉。



全てが崩れた瞬間。描いていた世界が、一瞬で崩れ去った。