のはずだったのに…

数日後、事態は急変した。

圭の容態が悪化したのだった。裕美がついたときにはもう遅くて、圭は静かに息を引き取った。

「いやぁ〜」裕美の泣きわめく声だけが、病室中に響いた。

涙をこらえながら、圭の両親が「大丈夫よ!」と励ましてくれた。

しばらくして涙を枯れるほど泣いた裕美は立ち上がった。

病室を出ようとしたとき、圭の母親に、

「待って」と声をかけられて、裕美は圭の母親の所に行く。

「これ、あの子があなたに宛てて書いた手紙なの」と手渡されたのは、圭が裕美に宛てて書いた手紙だった。

そこに書かれた内容には2人の思い出がたくさん詰まった愛の詰まった手紙だった。

退院出来ると言った真相も書かれていた。

自分が命が短いことを悟って…けど、裕美を悲しませたくなかったこと。

エイプリルフールを利用して思いついた、圭なりの優しさだったこと。

最後に『もう泣かないでね!幸せになって』と締めくくられていた。

それを最後まで読み切った裕美はまた泣き崩れてしまった。

圭の母親が優しく裕美を抱きしめた。

その日から、裕美の顔から笑顔が消えた。

笑わなくなったし、人ともあんまり絡まなくなった。

そしてそのまま社会人になってしまった。